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東京都の「中小企業の賃金事情」を批評する!/鵜呑みにしたらトンデモナイことになる<7>

東京都の「中小企業の賃金退職金事情」は、定昇の有無、ベアの有無を問うているが、中小企業にはそんな区分はない

◇ 東京都は、定昇の有無、ベアの有無を問うが、実際には中小企業にそんな区分はない
人事部長  中小企業の昇給は、最近昇給額が落ちてきているのでしょうね。定期昇給やベースアップはいくらぐらいが相場ですか?

北見  東京都の「中小企業の賃金退職金事情」には、定期昇給の額とベースアップの実施状況も載っています。

人事部長  それはどこですか?

北見  ここです。
(2)過去1 年間の定期昇給の実施状況
調査対象企業全体では、「定昇昇給の制度に基づき実施」と回答した企業が53.2%、「定期昇給制度があるが実施できなかった」と回答した企業は16.5%であった。また、「定期昇給制度がない」と回答した企業が23.3%であった。労働組合のある企業では、「定期昇給制度に基づき実施した」と回答した企業が75.3%で、労働組合のない企業における比率50.2%を上回った。

(3)過去1 年間のベースアップの実施状況
集計企業のうち、「ベースアップを実施した」と回答した企業が 15.1%、「現状維持」と回答した企業が45.8%、「ベースダウンを実施した」と回答した企業が3.0%であった。なお、労働組合がある企業では、「ベースアップを実施した」と回答した企業が18.4%で、労働組合がない企業の14.7%を上回った。


人事部長  なるほど、これが最近の昇給の実態ですか?

北見  いいえ、こんな調査は参考にできません。中小企業の場合、定期昇給とベースアップを区分しているところは少数派です。そもそも賃金表を使わずに昇給を決めています。

人事部長  そうですか? でもこの東京都の「中小企業の賃金退職金事情」には、こんなことも載っていますよ。
賃金表・賃金規定の有無
調査対象企業全体では、賃金表がある企業の比率は54.5%、賃金表がない企業の比率は44.4%であった。労働組合がある企業では、賃金表がある企業の比率は71.8%で、労働組合がない企業の52.2%を大きく上回った。

北見  そもそも中小企業には、賃金表がないところがほとんどです。あったとしても、メンテナンスができておらず昔のものだったりします。だから賃金表があったとしても、実際には使いません。Aは5号俸、Bは4号俸、Cは3号俸などと定期昇給を決めるのは官公庁や大手の世界です。


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