消えた年収>平成9年をピークにずるずると下がってしまった年収
景気は一般的に平成14年から浮揚し、戦後最長の好景気が平成20年に終わったといわれている。だが、勤労者は給与の面で景気浮揚の恩恵に浴することがなかった。勤労者の「平均年収」は、過去を調べてみると平成9年がピークだった。9年から18年まで毎年下がり続けた後で、平成19年にはわずかに上昇したが、傾向として右肩下がりであることは間違いない。平成9年と19年を比較すると表Aのようになっている。平成9年は、平均年収(男女計)が467万円だった。それが毎年ずるずると下がり、平成19年には437万円になった。額にして30万円の減少である。男性は577万円から542万円へと下がった。女性は278万円から271万円に下がった。
平成9年というと、バブルが崩壊して、数年経った頃だ。まだ年功序列給与の名残りがあった時代だった。その年は、橋本龍太郎氏が首相で、消費税を3%から5%に引き上げた。金融業界の信用が失墜した年でもあり、山一証券とか北海道拓殖銀行が破綻した。その年の流行語大賞には、作家渡辺淳一氏の書いた「失楽園」が選ばれた。女優の黒木瞳さんには多くの男性がしびれたものだ。そして子供たちの間では「たまごっち」「ポケモン」が大流行していた。また松井証券社長の松井道夫氏が言い出した「日本版ビッグ・バン」という言葉もトップテンに入賞した。アニメでは宮崎駿監督の「もののけ姫」が邦画史上最高の配給収入を記録した。それから日本レコード大賞には、安室奈美恵さんの「CAN YOU CELEBRATE?」が選ばれている。
このように振り返ってみると、つい最近のように思い出されるだろう。日本人の暮らしは、平成9年の頃が一番良かったのである。
このグラフをみていると、著者は思わず第一生命のサラリーマン川柳を思い出してしまう。
「年収が下がっているのに好景気」(川柳駄作)
「この景気回って来ないぞ給与には」(いざ凪景気)
著者も自分で次のような川柳を作ってみた。
「ここ十年 出るは溜息 足ばかり」(溜め息オヤジ)
「家計簿の 末尾は 常にカラーなり」(溜め息オヤジの妻)
◆表A 過去からの年収の推移