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新刊『消えた年収』の一部をご紹介します。


「日本は過去10年間で20兆円もの給与を失った!」
「年収300万円以下が4割占めるまでに」
「増えたのは大手の利益 減ったのは中小の給与」
「国税庁のデータをもとに徹底検証」

「一番落ち込んだのは関西、次は東北・福岡」
「沖縄では年収300万円以下が6割」
「『元気な名古屋』で増えていたのは派遣だけ」


<序文>

ずるずると年収が下がり続け、気が付いてみると
すっかり貧乏になった日本人


 まずは読者に質問。勤労者(1年を通じて勤務した勤労者。男女合計)の中で「年収が300万人以下」の人は平成9年には何%いたか? そして平成19年には何%になっていたか? 
 答えは

 平成9年 32.2% → 19年 38.6%

である。つまり、たった10年間で実に6.4ポイントも上昇したのだ。
 「低所得層が増えた」と聞くと、中には「それなら逆に高額所得者が増えて二極化が進んだのでしょ」と質問してくる向きがあるかもしれない。だが、それに対する答えは「NO」である。高額所得層といえる「年収1000万円超」の人は人数が減り、その比率も落ちているからだ。
 「日本は二極化が進んで貧富の格差が拡大した」と言われることが多いが、それは事実ではない。正しくは「日本は低所得化が進んだ」のだ。

 先ほどは「何%」という数字を申し上げたが、なぜそのようなことがわかるのか説明しよう。出所は国税庁の出している「民間給与実態統計調査」である。
 会社は年末を迎えると、社員の収入に関する年末調整を行う。国税庁は毎年、この年末調整による年収をまとめて「民間給与実態統計調査」を公表している。 この統計はどちらかというと「徴税」という観点でしかみられなかったが、著者は「日本の民間社員の給与」を探るために活用した。それを過去に遡って徹底分析したのが本書である。
  勤労者の全員を網羅したデータだからこそ、その数字を検証すればするほど興味深い事実を知ることができる。
  この国税庁の統計によると、勤労者の平均年収が 一番高かったのは平成9年であった。そこから18年までの9年間連続して下がり続け、19年になってわずかに上がった。
 そこで本書は「9年対19年」とい う形で、10年前と現在を比較し、給与がどう変化したのかを検証した。

 その統計によると、勤労者(勤務年数1年未満の人も含む)が受け取った給与の総額は、平成9年に220兆円あったが、平成19年には201兆円と なり、19兆円減った。つまり約20兆円もの給与が減ったのである。その勤労者の人数は、平成9年が5200万人だったが、19年には5300万人と なり、逆に増えている。つまり、平均年収が約1割下がってしまったのである。

 日本の景気は、平成14年2月から浮上し始めたと言われている。そして戦後最長と言われる好景気は平成20年に終結したと言われる。だが、その景気浮揚の恩恵に浴したのは大手企業と、一部のエリートだけだった。ほとんどの勤労者は年収がズルズルと下がり、10年前と比べると生活レベルが下がってし まった。
 大手は正社員を抑制しながら生産を増やしたので、期間雇用や派遣など非正社員が激増した。そして景気の急激な落ち込みとともに、非正社員は使い捨てにさ れて職を失い、路頭に迷うことになった。バブル崩壊後"失われた10年"という言葉が使われたが、給与ベースではいまだに続いている。

 給与と色々なものとの相関関係を検証することによって、給与ダウンを招いた原因は何だったかのかを探ってみたい。
 その"犯人"として著者が第一に 挙げたいのは「中国」である。対中国貿易が増えたカーブに反比例するように、日本人の給与が落ち込んでいったからだ。
  「日本の消費者が安い商品を求める」 →「日本の会社が中国に工場を造って輸入する」→「日本国内での仕事が減り、年収が下がる」という悪循環に陥ったと考える。
 「日本は中国に富を吸い取られた」「日本は国益のために国家戦略を再構築せよ」「大手企業は国益まで考えて良識あるビジネスをするべきだ」というのが著者の主張である。

 日本人はいい加減に気が付いて欲しい。「過去10年間は、日本人が、自分たちで、自分の首を絞めてしまった時代」だったのである。

北見昌朗


<目次>の青い部分をクリックすると、さらに詳しくお読みいただけます。

<目次>
第1部 ゲッソリ! 年収300万円以下が4割を占めるまでに
クイズ 失った給与20兆円は「どれだけの地域の勤労者の給与」に匹敵する? 
 ○ アテにならない公的な調査 人事院発表「民間給与は上がっている」?
 ○ 一念発起で著者独自の給与統計「ズバリ! 実在賃金」を作成
 ○ 「国税庁の民間給与実態統計調査」は「民間勤労者全員」の統計
 ○ 男性の平均年収は542万円だが、実際には400万円台が"相場"
 ○ 平成9年をピークにずるずると下がってしまった年収
 ○ 中間層が没落 そして「300万円以下」に落ちていった!

第2部 各地の動き 給与デフレの震源地は関西だった!
クイズ 過去10年間に年収が上がって"一番良い思いをした人"は誰? 貧乏クジを引いたのは誰?
 ○ 国税局単位でみた場合の地域別の給与事情 「最悪は大阪、次に仙台・福岡」
 ○ 給与デフレの"震源地"になった関西圏はペンペン草も生えない?
 ○ 落ち込み率が最大だった東北 「もう出稼ぎに出るほかないのか」
 ○ 玄界灘にリストラの嵐が吹き荒れた九州の北部地域 
 ○ 増えたのは派遣従業員だけ! 「一番元気」と言われた名古屋のこれが実態
 ○ 金属機械工業が半減し、中小企業が総崩れになった中国地方
 ○ 建設業がガタガタになり男性の年収が激減した関東信越
 ○ 男性の勤労者が激減した北陸 「若者はもう故郷に戻って来ないのか」
 ○ 低い年収が更に下がりペシャンコの四国 「300万円以下が46%に」
 ○ 建設業が壊滅! 中小企業メチャクチャ このままでは北海道全体が"夕張化"
 ○ 給与が低いなりに安定している九州の南部地域「これでもまだマシか」
 ○ 「年収300万円以下」が58%になった沖縄のトホホな現実
 ○ 全国から人が集まったが、給与の低いサービス業の仕事ばかり増加した東京

第3部 全国データを徹底検証 「中小企業崩壊」が「年収崩壊」をもたらした!
クイズ 「30歳以上35歳未満の男性の年収」は、平成9年と19年とを比べると、どのように変化したか?
 ○ 若年層の減少と高齢化 「現役で働く爺ちゃん 孫無職」
 ○ リストラで減る男性勤労者 家計のため働きに出る女性
 ○ 年功序列型給与が崩壊! 50代男性の年収は70万円減で667万円
 ○ 男性年収 中間層「300万円超700万円以下」の比率 60%→56%へ
 ○ 夫の年収ダウンに危機感! 働きに出る中高年女性が急増
 ○ 女性の年収は「年収300万円以下」が66%
 ○ 「30代前半 男性」の年収は50万円もダウン 同時に上がった未婚率
 ○ 若者の定着率の悪化と低年収化 
 ○  「中小企業で働く人」は7割 その比率は地方ほど高く
 ○ 広がる企業規模格差 小規模企業の年収は超大手の約半分
 ○ 中小企業の給与はガタガタ 特に男性はボロボロ
 ○ 最大の勤務先は「サービス業」 それで将来外貨を獲得して食糧輸入できるのか?
 ○ 業種別にみると給与が高いのは金融・保険業で、その次が金属機械工業
 ○ 第2次産業が減って第3次産業が増えると年収が下がる
 ○ 給与総額が落ち込んだ業種別は1位卸小売業 2位建設業 3位その他製造業
 ○ 異様なまでに膨張を続けるサービス業の正体は「派遣」と「医療・介護」
 ○ 非正社員の増加で低所得化が進むサービス業
 ○ 「派遣の急増」がワーキングプアを生み出した
 ○ 「派遣・非正規雇用の外国人」の増加が低年収化の一因
 ○ 低い給与のおかげで崩壊しつつある介護職
 ○ 卸小売業は大阪で壊滅的ともいえる落ち込み
 ○ 卸小売業はパート・アルバイトだらけで更なる年収ダウン
 ○ 建設業は公共事業削減のおかげで首切りの嵐
 ○ 金属機械工業は給与が安定した業界だが広島で極端な落ち込み
 ○ その他製造業は国際競争力弱くボロボロ
 ○ 「給与の下落」は「物価の下落」よりも大きく生活は苦しくなるばかりだった
 ○ 減る給与 減る税収 火の車になった国の財政

第4部 日本人を貧乏にした犯人は誰だ?
クイズ 小泉元首相は郵政民営化を実現するなど意欲的に行革に取り組んだ。そこで質問である。彼の在任中に、国家公務員(行政職)の給与はどのように変化したか? 
 ○ 「小泉改革」説 例えば規制緩和によりタクシー運転手の年収はダウン
 ○ 「大手儲け過ぎ」説
 ○ 「中国に富を吸い取られた」説

第5部 「安定した給与」を取り戻すための5つの提言
 その1 勤労者の7割が勤務する中小企業を育成するべし
 その2 東北など地方に工場立地を進めるべし
 その3 大手は正社員雇用を増やすべし
 その4 ワーキングプアの温床になっている派遣の拡大に歯止めをかけるべし
 その5 中国との付き合い方を再検討するべし 富を吸い尽くされるな!

あとがき「夫婦とも稼ぎで年収500万円時代の到来」