東京都の「中小企業の賃金事情」を批評する!/鵜呑みにしたらトンデモナイことになる<9>
東京都の中小企業の賃金退職金事情は、賞与ゼロの会社を除外して「平均値」を出しているが、それでは賞与の実態がわからない◇ 東京都は「賞与ゼロの会社」を除外して「平均値」を出すが、それでは実態がわからない
人事部長 なるほど、それで賞与の額の方はどうですか?
北見 平成23年度版の東京都の「中小企業の賃金退職金事情」では、次のように載っています。
ここで気を付けて欲しいのは、「賞与の平均値」は「賞与を支給している企業の平均値」
だということです。賞与ゼロの会社を除外していますので、このような計算方法で、賞与の支給実態がわかるのかどうか疑問です。
人事部長 なるほど、それで「賞与の平均値」はいくらになっているのですか?
北見 平成23年度版の東京都の「中小企業の賃金退職金事情」では、次のように載っています。
この年間の賞与額を、過去に遡ってチェックすると次のように載っています。
これをみますと、リーマンショック以降の賞与の落ち込みは感じませんよね。
人事部長 なぜ、こんな安定的な賞与の額になるのでしょうか?
北見 わかりませんが、1つの問題は「平均値」を使っていることだと思います。
人事部長 「平均値」ですか?
北見 そうです。問題は「平均値」です。ここに3人の人がいたとします。そのABCさんの賞与が次の通りだったとします。
この場合、賞与の平均値は、ともに100万円であり、変化がないではないですか?
ということで「今年の賞与の平均値は前年と同じ100万円だった」という発表になるわけです。
でも、Aさんは300万円ももらい、BCさんは賞与ゼロではないですか? これで「変化なし」と言い切れるのですか?
人事部長 ウーン、確かに。
北見 これが「平均値」の限界です。それでは変化が読めないのです。北見昌朗は賃金の分析は「分布」だと従来からいっていますが、それはこのためです。
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