東京都の「中小企業の賃金事情」を批評する!/鵜呑みにしたらトンデモナイことになる<4>
東京都の「中小企業の賃金退職金事情」は、所定時間内賃金という定義で調査しているが、そこが曖昧。本来残業代のはずの営業手当まで入っているかも?
◇ 毎年7月の賃金を調べる人事部長 そもそも、賃金のどこを調査しているのですか?
北見 東京都の「中小企業の賃金退職金事情」には、次のように載っています。
平成23年7月1か月の賃金
平成23年6月の給与締切日の翌日から平成23 年7月の給与締切日までの1か月間分としての支払われた現金給与額をいい、税、社会保険料を控除する前の金額である。
具体的には、前ページの表の「定例給与」の範囲であり、臨時に支給した賃金や賞与は含まない。なお、通勤手当については、6か月分などの一括支給の場合でも、1か月分のみを算入している。
所定時間内賃金とは、就業規則や労働協約などで決まっている所定労働時間に対して支払われる賃金をいう。
所定時間外賃金とは、早出、残業、休日出勤など所定労働時間外の労働に対して支払われる賃金をいう。
人事部長 なんですか、その所定時間内賃金とは?
北見 会社の就業規則で定められた始業から終業時刻まで勤務した場合に支給される賃金という意味です。所定時間外賃金とは、いわゆる残業代のことです。
人事部長 具体的には、どんな手当のことですか?
北見 次のような表が載っています。
人事部長 いろいろな手当がありますね。先ほどの「所定時間内賃金」という言葉もありますが、家族手当も食事手当も含まれるのですか?
北見 はい、実はそこが微妙なのです。ここで一番問題になるのは、営業手当です。問屋はよく営業手当を営業担当者に払っていますよね?
人事部長 はい、うちも問屋ですから、営業マンには営業手当を払っています。
北見 その営業手当は時間外手当ではないですか?
人事部長 はい、時間外手当という意味も含まれています。毎月定額です。営業には営業手当を払っているので、時間外手当を払っていません。
北見 そこです。問題は。その営業手当は本来なら時間外手当のはず。でも、それを「所定時間内の賃金」の欄に入れてしまう会社が多いのです。
人事部長 それはやりかねませんね。会社側は、その「所定時間内の賃金」という言葉の意味を知りませんから。
北見 この「みなし時間外手当」を入れるかどうかで何万円も違います。だから大違いになってしまいます。
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