ズバリ!実在賃金統計ドットコム > 岐阜県 公的な賃金の統計を批評する!/岐阜県の「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書」

岐阜県 公的な賃金の統計を批評する!/岐阜県の「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書」

「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書」は単なるモデル賃金しか載せていない

総務部長  岐阜県が発表しているものならば信用できますね。どんな内容ですか?

北見  平成22年度版の目次を見ると、次のような内容です。
岐阜県労働条件等実態調査結果報告書
出勤日数
労働時間
平均賃金
モデル賃金
週休2日制
休暇制度
パート労働
育児休業制度
介護休業制度
定年制
労働時間制度

総務部長  その「出勤日数」とか「労働時間」は何が書いてありますか?

北見  次のようなことが載っています。

出勤日数
1人当たりの平均出勤日数は21.2日であり、前年度より0.3日増加している。

労働時間
1人当たりの月間総実労働時間は174.3時間となり、前年の173.2時間より1.1時間長くなっている。これは、自動車産業や機械関連産業の受注増等、売上げ回復による生産活動増加の影響によるものと思われる。

総務部長  関心の持てる内容ではないですね。その「平均賃金」とは何ですか?

北見  例えば、このような賃金のデータです。

常用労働者の平均賃金は291,187 円(平均年齢41.5歳、平均勤続年数12.4年)で、前年度から3,664円の減額(対前年度比1.2%減)となった。

総務部長  どんな属性の人の平均賃金ですか?

北見  全労働者の平均賃金です。

総務部長  そんな数字は何に使うのですか? 

北見  民間企業にとっては無益な賃金のデータです。役所からすれば徴税の参考資料にでもするのでしょう。

総務部長  「7月分の出勤日数及び月間実労働時間」というのは何が載っているのですか?

北見  例えば次のような賃金のデータです。
7月分の出勤日数及び月間実労働時間
(1) 出勤日数
平成20年7月分賃金支給対象期間における 1 人当たりの出勤日数は21.5日で、前年の21.1日より0.4日増加した。
(2) 実労働時間
平成20年7月分賃金支給対象期間における1人当たりの月間総実労働時間は187.7時間となり、前年(183.5時間)に比べ4.2時間長くなっている。

総務部長  何の参考になるデータですか?

北見  民間企業にとっては、何の関心もわかないと思います。

総務部長  私が知りたいのは、岐阜県下の中小企業の賃金に関する相場です。例えば「年齢別・性別・学歴別」で、賃金がいくら払われているのかを知りたい。そんな賃金のデータは載っていないのですか?

北見  「モデル賃金」という欄があり、そこに次のような岐阜県の賃金が載っています。

別表4-1が「産業計」、別表4-2が製造業です。

toukei_gf01.gif 
 
toukei_gf02.gif総務部長  これなら、年齢別に賃金の額が載っているので、参考になりそうですね。どう見れば良いのですか?

北見  この「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書 平成22年度」は、モデル賃金の集計企業数が67社となっていましたから、まずサンプルの少なさをお考え下さい。

総務部長  そうですね。確かに少ない。

北見  この「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書 平成22年度」の調査対象者は「常用労働者」であり、正社員とは限りません。その「常用労働者」について、次のように解説が載っています。

常用労働者
次のア〜ウの条件を満たす者で、下記の1.、2.の者をいう
ア 期間を定めず、あるいは1ヶ月を超える期間を定めて雇用されている者
イ 臨時又は日雇労働者で、前2ヶ月の各月にそれぞれ18日以上雇用されている者
ウ ただし、パートタイマー及び役員(役員のうち通常の従業員と異なる給与規定又は異なる基準による給与の支給を受けている者)は除く
 1.  管理・事務・技術労働者
管理、経理、人事、福利厚生、販売、研究等の部門に働く労働者及び生産部門にあっては、これと同様な業務に従事する事務員、技術員及び作業に従事しない職長、組長等の監督的労働者
 2.  生産労働者
製造、加工、組立、入荷、包装、修理等一般生産業務・現場に従事する者

総務部長  こちらは「正社員」の賃金が欲しいのですが、そうなっていないのですね。

北見  それから「モデル賃金」という用語には、次のような解説が載っています。

モデル賃金
通常の年齢で学校を卒業し直ちに入社した者が、普通の能力と成績で勤務し、標準的な昇給をした場合の賃金であり、定期給与から基準外賃金及び通勤手当を差し引いた額をいう。設定されたモデル条件に合致する現存者がいる場合はその金額(実在者モデル賃金)を、また、現存者がいない場合はモデル条件に最も近い現存者から推定した金額(想定モデル賃金)を記入してもらった。


総務部長  うーん、うちのような中小企業はもともと新卒採用をしていないので、該当者が少なそうですね。

北見  そうです。もともと67社しかモデル賃金の集計企業になっていない上、このモデル条件に合致する労働者が少ないですから、サンプル数は特に中高年になりますと、ほんのわずかだと思います。

総務部長  その「モデル賃金」の額はいくらぐらいですか?

北見  「高校卒 男性 生産」の部分をみてみましょう。18歳は162858円ということで、初任給相場と同じです。30歳の238683円についても違和感がありません。40歳の298516円については「高いかな」と感じます。50歳の362933円については「オイオイ」と言いたくなるような高さです。

18歳   162858
30歳   238683
40歳   298516
50歳   362933
 
総務部長  「ズバリ! 実在賃金」の岐阜県版の賃金の額と比べて差があるのですか?

北見  「ズバリ! 実在賃金」の岐阜県版は、一般男性社員の所定内賃金として次の額を示しています。

40歳   上310000  中262000  下248000
50歳   上341000  中290000  下265000 


だから「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書 平成22年度」と「ズバリ! 実在賃金 岐阜県版 22年度」とを比較すると、次のような違いがあります。

50歳   362933  「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書 平成22年度」
50歳   290000  「ズバリ! 実在賃金 岐阜県版 22年度」

総務部長  随分違いますね。なぜ、こんなに違うのですか?

北見  調査の仕方が全然違います。次のように異なっています。 

「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書 平成22年度」=モデル賃金、平均値
「ズバリ! 実在賃金 岐阜県版 22年度」=実在者賃金、中位数

総務部長  ということは「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書」は参考にならないということですか?

北見  中小企業が賃金の制度を作る時は、あまり参考にならない、というよりも参考にしない方が良いという意味です。もっとハッキリ申し上げれば、参考にしてはいけません。

総務部長  「岐阜県労働条件等実態調査結果報告書」は、賃金に関して、その「モデル賃金」のほかに有益な情報が載っていますか? 例えば、諸手当の相場とか。

北見  賃金のほかに載っているのは次のデータです。

週休2日制
休暇制度
パート労働
育児休業制度
介護休業制度
定年制
労働時間制度


>>次へ
>>岐阜県 公的な賃金の統計を批評する! に戻る